皆さんはIADL(Instrumental Activities of Daily Living)の改善に必要な要素を言えますか?
生活期において、IADLの改善はとてもニーズが高く、自立した生活を送るのに必要なものであると言えます。
しかし、IADLに関する情報を扱っている本やサイトはほとんどないのが現状です。
そこで今回は、IADLの改善における3つの要素という、少しマニアックな内容となっています。
①IADLとは8種類の日常生活活動をさす

IADLは、Instrumental Activities of Daily Livingと言い、日本語では手段的日常生活活動と言います。
ADLは歩行や着替えなど、日々の屋内生活を送る上で誰でも基本的に行う活動のことです。それに対して、IADLは買い物や服薬管理など、ADLよりも高度な活動かつ自分の身に置かれた環境に適応する活動を指します(①)。
ですので、全員が行うADLに比べて、IADLは人によっては一切行わない活動があるのも特徴です。
ほとんどの場合、IADLはLatwonのIADL尺度の8項目(②)を取り扱います。
・電話を使用する能力 ・買い物 ・食事の準備 ・家事 ・洗濯 ・移動 ・服薬管理 ・金銭管理
これらの活動は、単純に筋力の有無だけでなく認知機能や課題が持つ特異的な動作も含まれるはずです。
地域高齢者にとって、生活を支えていると言っても過言ではないIADLですが、この複雑な活動の予後予測を行うすべはあるのでしょうか?
次の章で見ていきたいと思います。
②IADLの予後予測には筋力や歩行能力が大事

IADLの改善に必要な要素の1つ目は筋力と歩行能力です。
Daniel X M Wangらの研究(③)では、握力や下肢の筋力とADLおよびIADLとの関連性を調査したレビューによると、8/9の論文で筋力低下がIADLの悪化と関連していることが示されました。
また、SPPBや歩行速度もIADLの悪化と関連していることが明らかになっています。
買い物などの移動や家事などの立位・運搬動作がIADLに含まれることから、運動機能はIADLにおいても重要な要素と言えそうです。
この論文だけでは「IADLの獲得や予後予測には、筋力や歩行能力をみればいい!」となりそうですが、一概にそうとは言えません。次の章ではIADLと認知機能に関する内容を見ていきましょう。
③IADLの予後予測には認知機能も必要

IADLの改善に必要な要素の2つ目は認知機能です。
Amin Ghaffariらの研究(④)では、脳卒中患者におけるIADLの自立度を調査した研究になります。結果としては、高齢・認知障害・うつ病がIADLの自立度に関連すると述べています。
IADLは服薬管理や金銭管理など、運動機能が必ずしも必要としない動作が含まれます。また、買い物なども記憶力や空間認識などの高次脳機能や認知機能を必要とします。
このことから、IADLの改善においては運動機能×認知機能が必要になると考えられます。もしかしたら、IADLの特異的な要素も加味する必要があるので、対象者によっては対象となるIADLが持つ特異的な特徴を考慮する必要もありそうですね。
④階段のある住宅に住んでいる人はIADLが低下しにくい!?

IADLの改善に必要な要素の3つ目は環境です。
Kimiko Tomiokaらの研究(⑤)では、平屋・2階がある家・エレベータ付きの家のそれぞれに住んでいる高齢者を対象に、IADLの自立度との関連性を調査しました。
それによると、階段のある家に住んでいる高齢者がIADLの低下に対するリスクが低いことが明らかになりました。
現状で階段が支障とならない高齢者においては、階段の使用によって活動量を増やせることが要因だと考えられます。
一般的には高齢者にはバリアフリーが勧められますが、活動量を増やせる環境を整えることもIADLの改善・維持においては重要かもしれません。
⑤まとめ
IADLの改善には①筋力や歩行能力、②認知機能、③環境が重要であることを述べてきました。
これ以外にも、IADLの特異的な動作やパーソナリティなどを考慮する必要があると思います。
この記事がIADLの改善に困っている方の参考になれば幸いです。また、引用文献も分かりやすいものばかりですので、是非ご覧ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
⑥引用文献
①Suh GH, Jung HY, Lee CU, Lee SK, Lee NJ, Kim JH, et al. Effect of galantamine on caregiver time and activities of daily living in mild to moderate Alzheimer’s disease: a 1-year prospective study. J Korean Geriat Soc. 2007;11:74–82.
②Lawton MP, Brody EM. Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living. Gerontologist. 1969;9:179–86.
③Daniel X M Wang, Jessica Yao, Yasar Zirek, Esmee M Reijnierse, Andrea B Maier. Muscle mass, strength, and physical performance predicting activities of daily living: a meta-analysis. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2020;11:3-25.
④Amin Ghaffari , Hamid Reza Rostami , Malahat Akbarfahimi. Predictors of Instrumental Activities of Daily Living Performance in Patients with Stroke. Occup Ther Int. 2021;27:6675680.
⑤Kimiko Tomioka, Norio Kurumatani, Hiroshi Hosoi.Association between stairs in the home and instrumental activities of daily living among community-dwelling older adults.BMC Geriatr. 2018;18:132.
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